★★★
2018.2.9/TOHOシネマズ上野
私はやっぱり鈍いのかもしれないけど、この映画の要点がさっぱりわからなかった。許すとか信頼とかそういうことと関係あるの?いやいやいや、、そういうことじゃないと思うんだけど。
6人の犯罪者が町にやってくる。もちろん6人はそれぞれ別の刑務所から、自分の他に5人も犯罪者がいるとは知らないで、それぞれの闇を抱えたままで、過疎化が進んだ海沿いの「魚深市」にやってくる。そのお出迎えと最初のお世話をする係りが魚深市役所の職員で、錦戸亮くんが演じる月末一(つきすえはじめ)。地味でおとなしい性格の青年です。
映画が始まってすぐに「あ、この映画おもしろそう」って思うのね。序盤20分ぐらい?犯罪者6人の紹介に使われてる箇所なんだけど、新幹線や飛行機や、いろいろな交通機関でやってくる犯罪者を駅や空港に亮くんがお迎えに行く。亮くんもこの時点では刑務所から来たと知らない。6人それぞれの反応が非常におもしろい。「いいところですよ、人もいいし、魚もうまい」と6人全員に投げかける亮くんとそれに対する6人それぞれの反応が違って、それでも、刑務所から出てきたっていう演出が、例えばらーめんやチャーハンを貪り食うとか、団体行動でキョドるとか、やたら甘いものを食べるとかね、そういうことを目にしてなるほどね、っと妙に納得させられてしまうところが本当におもしろい。でも、そこまでだ。
いろいろ書いても意味がないので、まあ、この辺にしとくんだけど、要するに私としては別に衝撃作でもなければ、日本映画界を震撼させるとか全然思わなかったんですけど、、っていうか、話は単純で面白くないし、設定もバカらしい。でも、役者はすごい。
錦戸亮くんは地味でまじめでおとなしくて、でもいろいろ心の中に秘めているこの青年の役を淡々と演じるし、やってきた囚人6人はもちろんひとりひとりがすごい、とにかくすごい、みんな犯罪者・人殺しなんだけど、人殺しはクズだって言っていいよね?って役だ、6人全員。背景もキャラクターも、殺し方も殺した理由ももちろん違うけど、ものすごく役と役者が合っている。田中泯さんはすごい。言わずもがなだな。そして北村一輝、特にすごい。クズだけどなかなかいいキャラしてる。それを見事に演じてる。
そして、彼ら6人が犯罪者とは知らされずに、市に頼まれて身元を引き受ける市民がいるわけだけど、この人たちがまたすごい。地味で寂れた町のこれまた寂れた床屋のオヤジとか、クリーニング屋の女とか、だ。安藤玉恵、かなりすばらしい。
まあ、キリが無いんだけど、役者頼みの凡作で、こんな映画もあるんやなぁ、という感じ。もう少し、役者以外の何かがあってもよかったのになぁ。というのがあくまでも私個人の感想ね。でも思い返すと役者をここまで褒められるということはそれなりの作品であると言えるかもしれないね。
ひとつだけ言っておきたいのは、冒頭でスクリーンに現れる5行ぐらいの引用文、これをしっかり読んで心に置いて観た方がいい、というのはあるね。というのも私、よく見えなかったんです。もうちょっと明確にしてくれたら・・。
その種子やがて芽吹き タタールの子羊となる
羊にして植物
その血 蜜のように甘く
その肉 魚のように柔らかく
狼のみ それを貪る
羊というのは普通の動物ではありません。
少しばかり宗教的な観点でこの引用を読み解いておけば、羊の木、のタイトルや本作の表現しようとする何かについて、この鈍い私でも、もう少し解釈できて楽しめたかもしれませんが。
原作は漫画みたいなので、ちょっと読んでみようかなぁ、、、って結構ダメダメ言ってる割には気になってないか?>自分。映画と全く同じとはどう考えても思えないわけで、映画は役者頼みの薄っぺらい作品に感じたんだけど、本当にそうなん?と。そこがちょっと気になるわけで、自分の中でなんかケリがついてないような気持ち悪さがあるんですよね。
あ、★の数が評価の割りに多いのは役者さんへのオマージュです。それと深水三章さんの遺作にもなってしまったわけで、ご冥福をお祈りします。